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透析導入を少しでも遅らせるには(腎不全の進行を遅らせるために)
腎臓病は自覚症状があまりない為、知らないうちに症状が悪化してしまう病気です。
慢性腎不全の場合、腎不全が進行していくと最終的には腎臓の機能が低下して、透析療法が必要になります。
慢性腎不全で透析療法を開始するまでを保存期腎不全といい、この時期に腎不全の進行を止めて透析に至らないよう、
少しでも透析開始を先に延ばせるようにする事が大事です。
それでは腎臓の残った機能を温存するため大事なことを話しましょう。
 腎臓の働きを保ち、腎機能の低下を防ぐ為の基本
   
T・Uを有効にするには、自己規制管理がうまくいくように環境を整えることが大事です
 T食事療法
 食事療法とは、腎機能の負担を軽くし低下を抑えることにもっとも有効な方法です。
保存期腎不全の早い段階から食事療法を行なうことで、
腎不全の進行を遅らせることが可能です。
腎不全の食事療法の基本は、蛋白質と塩分を控えながら、
エネルギー不足がないようにすることです。
@蛋白質制限
蛋白質のとりすぎは腎臓を傷めてしまいます。
なぜ?
蛋白質が体の中で代謝・分解されると窒素を含んだ老廃物となり腎臓で濾過され尿となり排泄されます。
しかし、腎不全になると老廃物がうまく濾過されず排泄が困難となります。
このため、腎臓の糸球体に負担がかかって、糸球体の破壊が進行します。
腎臓の機能が低下しているところに蛋白質を多く摂ると、排泄が追いつかずに腎臓に負担がかかり、腎臓を傷つける原因になります。
又、体内に濾過されず残った老廃物が蓄積されると、血液中の尿素窒素が高くなる等、さまざまな問題がおこります。
これらのことから腎不全の治療には、まず蛋白質の摂取を減らすことがもっとも必要です。
働きの低下した腎臓の負担を減らし進行を少しでも遅らせるために、蛋白質は摂り過ぎないように!
(蛋白質の摂取量)
・日本人が1日に摂取する蛋白質の量は平均約80g〜85gです。
・日本人の成人の蛋白所要量は、男性65g〜70g、女性55gです。(WHOでは体重1kgあたり0.8gの摂取量で十分との調査もあります)
・慢性腎不全の方の蛋白摂取量基準は次のとおりです。
 保存期腎不全 → 0.6g〜0.7g/標準体重1kg
 *標準体重の計算方法(身長から計算)
   例:身長160cmの場合
     標準体重=1.6(身長をmで)×1.6×22=56.3kg
     1日の蛋白摂取量が0.6gの場合
     56.3×0.6=33.8g
A塩分制限
塩分の摂りすぎは高血圧になり腎臓を傷めてしまいます。
なぜ、
塩分を摂りすぎると喉が渇いて水分を過剰摂取してしまい、体に水分が溜まり、むくみがでたり、高血圧になります。
腎機能が正常な人でも、長期間、高血圧を放置すると、腎機能障害へと至ります。
腎不全でナトリウムの排泄能が低下しているところに、塩分を摂りすぎてしまうと、さらに高血圧となり腎不全を進行させてしまいます。
塩分制限をおこない高血圧にならないようにすることが大切です。
塩分制限で血圧をコントロールしましょう。
(塩分の摂取量)
・1日7g以下 むくみが強い場合1日5g以下
・厳しい制限は、食事をまずく感じてしまい長続きしません。少しずつ時間をかけて減塩をおこない薄味に慣れていきましょう。
・香辛料や酸味で味付けするなどの工夫をしましょう。
Bエネルギーは十分に
人間は何もしないで静かに横になっているだけでも生命を保つ為に、一定量のエネルギーが必要です。
蛋白質を抑えた食事制限をしているときにエネルギー量が不足すると体を作っている蛋白質が壊され、老廃物が増えることになります。
(老廃物が増えると蛋白質の所でものべた様に腎臓に負担がかかります。)
エネルギーの元になる食品を適切に録りましょう。
(エネルギー量)
・1日に必要なエネルギー基準 → 35kcal/標準体重1kg(年齢・性別・生活活動量によっては28〜40kgの範囲になります)
・蛋白質を適量に抑えてエネルギーを十分に摂る為には、砂糖や油を上手に利用しましょう。
・蛋白質の制限をした場合、普通の食品でエネルギーを補うのは困難な場合が多いのです。
・蛋白質の制限をした場合、腎不全の治療用食品を利用することでエネルギーを補充できます。
(リン・カリウム・水分について)
腎不全が進行し血中のリン・カリウムが増えたり、強いむくみや尿量の減少がみられたら制限が必要になります。
食品交換表を上手に利用しましょう
食品交換表
表1 ご飯・餅・麺・パン・マカロニ 蛋白質を含む食品
表2 果実・種実・いも
表3 野菜
表4 卵・肉・魚・豆・乳・その他
表5 砂糖・甘味類・ジャム 蛋白質を含まない
エネルギーとなる食品
表6 油脂
その他 調味料


     
エネルギー
100kcalのエネルギーの源となる食品
米飯 2.5 牛乳 3.3
食パン 9.3 プレーンヨーグルト 3.6
もめん豆腐 6.6 プロセスチーズ 22.7
きぬごし豆腐 4.9 うなぎ蒲焼 23.0
納豆 16.5 しらす干 23.1
和牛かた赤肉 20.2 アジ 20.7
和牛かたロース 14.0 アユ 18.3
牛ひき肉 19.0 うるめイワシ 21.3
牛レバー 19.6 カツオ
25.8
豚かた赤肉 20.9 カレイ 19.6
豚ロース 21.1 サケ 22.3
豚ひき肉 18.6 サバ 20.7
ロースハム 16.5 サンマ 18.5
ウインナー 13.2 ブリ 21.4
鶏肉むね 22.3 マグロ赤身 26.4
鶏肉もも 18.8 マグロ脂身 20.1
ささみ 23.0 アサリ 6.0
鶏ひき肉 20.9 カキ 6.6
鶏卵 12.3 車エビ 21.6

砂糖25g
ジャム40g
植物油10g マーガリン15g
 U薬物療法
薬物療法では、腎不全の進行を遅らせるためと、腎臓の機能が低下したために起こる貧血等の合併症を改善するために薬が用いられます。
・降圧剤(血圧を下げるお薬)
腎臓が悪くなると高血圧になりやすく、高血圧になると腎臓の細動脈が硬化し、
腎臓の働きがさらに悪くなるという悪循環に陥ります。
高血圧は腎臓以外にも心臓.脳血管.その他、全身的に悪い影響を与えます。
高血圧は蛋白質や塩分の過剰摂取とともに腎不全を悪化させる最大の原因です。
血圧を下げるために塩分制限とともに降圧剤を用います。降圧剤は血圧を下げるしくみから大きく分けられます。
@末梢血管を拡張させて血圧を下げるアンジオテンシン変換酵素阻害剤.カルシウム拮抗剤
A尿量を増やし体内の水分や塩分を対外に除いて血圧を下げる降圧利尿剤
B脳中枢に作用(交感神経を抑える)して血圧を下げるβー遮断剤.α遮断剤
等があり、特徴によって使い分けられます。
なお、高血圧の薬の中には(アンジオテンシン変換酵素阻害剤)糸球体の硬化を防ぐ作用もあります。
抗血小板薬・抗凝固剤には糸球体内の血液の凝固を抑制し硬化を防ぐ働きがあります。
・利尿剤
腎不全のため排泄されず、体内に水分が溜まり体液過剰になると、むくみや高血圧等の症状が現れるために利尿剤が用いられます。
利尿剤には、尿中へのナトリウム・水分の排泄を増やす作用があり尿の量が増えます。
・貧血
腎臓が分泌するエリスロポエチンというホルモンは赤血球を作っています。
腎不全になると、この造血ホルモンの分泌が減り不足するため、貧血になります。貧血を補うためにエリスロポエチン製剤を使用します。
鉄剤は必要に応じて併用します。
・高脂血症薬
血液中のコレステロール.中性脂肪が増加すると高脂血症になります。この高い状態が長く続くと動脈硬化の原因になります。
お薬で脂質代謝を改善し、コレステロールを低く抑え動脈硬化の予防、治療を行なうことで、腎不全の進行を抑えられることがあります。
・経口吸着剤
腎不全による血液中の毒素は腎不全を進行させますので、この薬は腸管内で毒素を吸着し除去するために使用します。
(血液中のクレアチニン等の老廃物の上昇を抑制し尿毒素症状の改善をはかる)
・ビタミンD製剤
腎不全ではビタミンDの活性化が阻害されるため、骨がもろくなり骨障害をきたしやすくなります。そのため、活性型ビタミンD製剤を使用し予防します。
その他にも腎不全の進行にともないカリウム除去剤、カルシウム製剤、リン吸着剤を使用する場合があります。
腎不全では腎機能低下の程度により、薬の吸収率の変化、体内での代謝の差、排泄の差など全体的に判断して、服薬量・回数・服薬の仕方を変えます。
医師より出された用量・用法をしっかりと守りましょう。
腎不全では、過労やストレスも進行を早める原因になります。自分の年齢・体力・残腎機能にあった生活や適度な運動を心掛けましょう。
運動量は主治医に相談して決める必要があります。
いずれにしても食事療法・薬物療法を自分らしく生活しながらコツコツと自己管理に取り組んでいくことが大切です。
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